「今年は忙しかったけど、来年の夏には絶対一緒に海に行こうよ」 と言った。
 でも、次の夏まで本当に一緒にいられるのかどうかは誰にもわからない。
 いくら仲が良くても、僕は寝ぼけて線路に落ちて電車に轢かれてしまうかもしれない。
 どうでもいいことを考えながら家に帰った。
 暗い部屋で、近くの街灯から漏れる薄明かりで、僕は君を見つけた。
 部屋にはまだ、君の温度が残っていた気がした。
 僕は不思議と落ち着いていた。
 残念だけれど、少し君が羨ましかった。
 まだ春ですらないけれど、明日は休みを取って君と港に行こうと思う。
 明日からは僕らが望めばそこが夏の海になる。

